法律よもやま話10    

弁護士 松 原 三 朗  クレアヒルだより 第16号(平成15年10月)
     

   

  今回は相続に関する話です。私が実際に相談を受けた話を2つ。
1つは60才代の主婦からのもの。その人は同居の養父を10年、続いて義母を8年間一生懸命に介護して看送り、やれやれの矢先、都会で生活している夫の弟と妹から遺産分けの話を切り出されました。遺産といっても義父名義の家、土地しかなく、その主婦は当然長男である夫がもらえるものと思っていました。
実際にも義弟妹は「お義姉さん、すみませんねー、父や母の面倒をみてもらって。私達は家を出た者だから、後はお義姉さん夫婦で自由にしていいから」と義父母が生前中は言っていました。
然し、義弟妹はそれ迄の態度をガラッと変えて、相続分は子供に平等にあるから、家、土地の権利は3分の1づつあると主張しました。土地は100坪あって3,000万円、家は1,000万円くらいの価値があるので合計4,000万円です。3分の1づつの権利があるとなると、1人1,333万円となります。長男がそのまま家、土地をこれまでどおり住むのなら、私達に合計2,666万円を出してくれと要求してきました。長男にはとてもそんなお金はありません。本当にそんなお金を出す必要があるか、という相談でした。私は、気の毒ですが出す必要がありますと答えざるを得ませんでした。正確には、被相続人である両親の面倒を見たことによる特別寄与が認められる可能性があり、又弟姉が学資や結婚資金を出してもらっている場合は特別受益があったとして、それぞれ若干調整があり得ますが、原則は相続分は平等で、唯一の相続財産である家、土地を長男が独占するなら相続分に見合うお金を支払う必要があります。これを代償金といいます。長男には2,666万円ものお金はなかった為、結局、家、土地を売却して現金で分けることとなり、相談者である主婦の方は義父母の面倒を長期間みたうえで家を出る羽目となってしまいました。
 もう1つは丸で反対のケースの相談でした。長男夫婦に老後の面倒をみてもらおうと、相談者であるお父さんは、家、土地の名義を生前に長男に移しました。自分が死んだ後相続でもめるのはいやだからすっきりしておいてくれと長男夫婦から頼まれたことも名義変更の動機でした。ところが、名義が変更になるや急に長男の嫁の態度が変わり、面倒をみるどころか殆ど邪魔者扱いにされ、お父さんの部屋は何ヶ月も掃除がしてない為ほこりだらけ状態で、寝たきりにもかかわらず長男夫婦が外食する時などは晩御飯もろくろく支度してない程でした。
みかねた東京在住の次男がお父さんを引き取って面倒をみることになりました。
お父さんの相談は、長男に名義変更した家、土地をとり戻して二男にやりたい、というものでした。お父さんには気の毒ですが、この場合、一生面倒を見ることを条件とする契約書があるなど特別の事情がない限りとり戻すことは不可能です。一旦行なわれた贈与は取り消すことができないことになっています。
 以上2つのケースを未然に防ぐ方法はあるでしょうか。答えはイエスです。遺言の話になりますが、話が長くなるので紙面の都合上次回にします。