法律よもやま話12    

弁護士 松 原 三 朗  クレアヒルだより 第18号(平成16年3月)
     

   

  今回は遺留分の話です。私が3,000万円の遺産を残して死んだとします。私には妻と3人の子供がいます。私は遺言で妻に全財産を相続させると遺言しました。然し、子供の1人が「お母さんだけ遺産をもらうのは不公平だ」といって納得しません。この場合、子供は遺産をもらうことができるでしょうか。答えはイエスです。いくら遺言をしていても、他の相続人がどうしてもと言えばもらえる権利があります。これを遺留分といいます。
 私が遺言をしないまま死んだら、私の遺産は法定相続分に従って分けられるのが原則です。私の家族構成では妻が2分の1、子供が残り2分の1を3人で分けますから1人6分1となります。
従って、妻が1,500万円、子供が500万円ずつとなります。然し、先程の遺言があれば妻が3,000万円丸々もらうのが原則です。然し、子供が遺留分の主張をすると、その子供には法定相続分半分、つまり250万円はもらえることになります。他の2人の子供は遺言どおりでよいと考えて遺留分の主張をしなければ、残りは全て妻がもらうことになります。 
 遺留分は兄弟姉妹にはありません。従って、私に子供がおらず、妻と兄弟が相続人である場合、妻に全財産を相続させると遺言したら兄弟は一切もらえません。妻や子供の遺留分は前述のとおり本来の相続分の2分の1です。
 遺留分の主張(遺留分減殺請求といいます)は、遺言の内容を知った時から1年以内にしなければ時効によって消滅します。具体的には、私の子供が私の妻に対し、「遺留分をもらいたい」と表明します。口頭でも有効ですが、言った言わないの紛争を避けるには内容証明郵便で通知するのが一般的です。 
 このように、いくら遺言しても妻や子供が相続人である場合は本来の相続分の半分迄はもらう権利がありますから、100%自分の考えどおりに遺産を分けることができるわけではありません。それでも相続人は故人の意思を最大限尊重して遺留分の主張などしないこともあり得るし、遺言をしないよりははるかに自分の意思による処分が可能ですから、矢張り遺言はするべきだと思います。