法律よもやま話15

 

弁護士 松 原 三 朗  クレアヒルだより 第21号(平成17年7月)
     

   

 前回に続いて憲法の話です。憲法というと矢張り第1に思いつくのが9条です。皆さんも同じだと思います。何しろ憲法が制定された昭和22年から今日まで、やれ自衛隊は違憲の軍事力だとか、自衛隊の海外派遣は違憲だとか、事あるごとに憲法9条がひきあいに出されます。 そこで今回は憲法9条について考えてみることにします。
 憲法第9条は第二次世界大戦で日本が侵略戦争をしてしまった事を反省し、二度と戦争をしないことを誓い、その決意を裏付けるため「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と定めています。一体どの程度まで武力があったら戦力と言うのでしょうか。
 警察も拳銃は持っているし、警棒もあるし、柔道や剣道や空手の上手な屈強な男が何万人もいるし、装甲軍は戦車とまではいかなくても普通の乗用車よりは頑丈です。全国の警察が一致団結すればそれなりの力となります。然し、いくら警察でも飛行機も機関銃も大砲も持っていませんから、例えば北朝鮮と日本の警察が戦っても完璧に負けます。
 憲法が禁止する戦力とは、少なくともちょっとはまともな戦争ができるだけの装備や人間を備えた組織をいいますから、当然警察は戦力ではありません。警察の目的自体も外国の敵と戦う事ではなく、国内の殺人犯や泥棒を逮捕することです。
 内容的にも目的から言っても戦力とは言えません。
 では自衛隊はどうでしょう。自衛隊はそれぞれ戦艦や戦闘機や戦車や大砲を大量に保持しており、北朝鮮が攻めて来ても互角の戦いができると思います。自衛隊の目的も警察のような単なる国内の治安維持というものでなく、日本を外国の侵略から守るというものですから、こらはもう憲法9条にいう戦力であることは明らかです。
 自衛隊が明らかに戦力であるなら、冒頭で述べたように憲法9条は「戦力はこれを保持しない」とうたってますから、その存在は憲法違反となります。
 事実自衛隊は憲法違反だと主張する憲法学者や政党、市民団体、国民個々人は沢山います。然し、他方で憲法違反ではないと考える人も又沢山います。その考えの違いはなにか。それは憲法の禁止する戦力とは侵略戦争の為や国際紛争を解決する手段としての戦力であって、外国から攻撃されたため日本の国土や国民の生命、財産を守る為に戦う手段としての戦力、即ち自衛の為の戦力の保持は許されると解釈するか、戦力に侵略の為の戦力とか自衛の為の戦力などという区別はないのであって、戦力は戦力として憲法はその保持を一切禁止していると解釈するという点です。       
 一切の戦力を持たなければ誰も日本を警戒することはありません。北朝鮮も日本が自衛隊も米軍の駐留もなければ日本を警戒してテポドンでおどしたり攻撃したりはしないと思います。そういう平和国家としての立場で諸外国との関係を確立して行くのが憲法のうたう平和主義だという説はそれなりに説得力があります。
 然し、イラクがクウェートを一方的に侵略し、財産を略奪し、婦女子を犯し、石油産業を支配しようとしたように、平和主義を唱えるだけでは国民の生命、財産は守れない、不当な侵略は断固撃退するという姿勢とそれを裏付ける力をもつことによってこそ日本の防衛は果たされる、との考えも説得力があります。
 さて、みなさんはどう考えますか。今憲法9条の改正が盛んに検討されてます。その内容は次回に述べることとします