法律よもやま話 16

弁護士 松 原 三 朗  クレアヒルだより 第22号(平成18年1月)
     

   

 前回に引続き憲法の話です。前回は、憲法9条は自衛の為の戦力は保持出来るか否か、自衛隊は憲法違反か否かについて様々な意見があることを話しました。
 いづれにしても日本国の最高法規である憲法の解釈を巡って意見が二つに割れることはよくありません。全ての国民が憲法の解釈を巡って意見が二つに割れることはよくありません。全ての国民が憲法の意味を明確に理解し、憲法に従った法律を制定し、国家を統治して行く必要があります。そこで、この憲法法を改正して憲法9条をより明確にして、解釈を巡って議論の割れることのないようにしようという動きが活発になっています。国民の中には前々から現在の憲法は戦勝国アメリカから押しつけられた憲法だから、日本国自信が自主的に新たな憲法を作ろうという意見がありました。そういう意見とともに前述した解釈を巡る争いをなくすためにも憲法改正の動きは加速されました。
 では、実際にどのような改正案が出ているか見てみます。
 先ず、自民党は明確な改正案を出しました。憲法9条の二を新たに設け、その1項を「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する」と定めました。日本国及び日本国民の安全を確保する為自衛軍を自衛軍を保持すると明記してありますから、これ迄の憲法9条に「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」との規定と比べたら解釈の分かれる余地がありません。
 更に自民党案では自衛軍の役割についても明記しています。つまり「自衛軍は第1項の規定による任務を遂行する為の活動のほか、法律の定めるところにより国際社会の平和と安全を確保する為に国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」と定めたのです。
 この規定は、これまで自衛隊が海外へ派遣されることの憲法違反議論にも終止符を打とうとするものです。
 今、自衛隊はアフガニスタンでの国連軍の活動の後方支援やイラクにおける復旧活動をしていますが、自衛の為の軍隊は許されるとする立場の人からも海外派遣は自衛の為の自衛隊の活動とはいえないから憲法違反だとの声があります。
 解釈の分かれる憲法の規定を「国際的に協調して行われる活動を行うことができる」とすることによってこの論議にも決着をつけた訳です。
 然し、この自民党の改正案に対しても色々な批判があります。日本国憲法の最大の特徴である平和主義は、一切の戦力をもたないことで国際平和と日本の安全を守ることにあるのに、その理念を破壊して軍事力を持ち海外へも平気で出かけるとなると戦前の体制へ逆戻りだ、という意見が代表です。
 さて、皆さんは自民党の憲法改正についてどう考えますか。