法律よもやま話17   

弁護士 松 原 三 朗 クレアヒルだより 第23号(平成18年7月)

  

   

 最近は有名人がよく逮捕されますね。ホリエモンや村上さんは、六本木ヒルズの豪邸から塀の中の別荘に入りました。
 今日の新聞報道で村上さんは、5億円の保釈金をポンと払って保釈されて六本木ヒルズへ帰ったそうです。今回は刑事事件で逮捕された場合の手続きについて説明します。 
 犯人が刑事事件を犯すと逮捕されます。普通は、逮捕するのは警察官ですが、政治犯や証券取引法違反のように社会的に注目される事件は検察官が逮捕することもあります。刑事事件の最終的な処分、例えば起訴するとか起訴猶予処分にするという決定は検察庁が行います。
 従って法的には罪となるかどうか解釈が難しいといった事件は、警察は検察庁と相談しながら捜査を進めます。検察庁は自ら直接操作することもあってそういう場合は逮捕も自らする訳です。
 警察官が逮捕した場合は24時間(丸1日)だけは身体を拘束することができますが、その間に検察庁に「どういう事件の容疑で誰々を逮捕しました。ついては後のことを宜しくお願いします」と連絡します。警察が自分の判断でいつまでも身柄を拘束しておくことはできません。24時間以内に検察庁へ連絡しない場合は、釈放しなければ違法となります。連絡を受けた検察庁は48時間(丸2日)以内に、さてどうするか、釈放するか、 更に身柄を拘束して取り調べをするかを決めなければなりません。更に身柄を拘束する場合は、裁判所に拘留請求をしなければなりません。検察庁も警察と同じように自分の判断でいつまでも身柄を拘束することはできないのです。裁判所は検察庁から送られたそれまでの捜査資料と被疑者に種々質問(これを拘留尋問といいます)をして拘留するかどうかを決めます。拘留する理由があると判断すれば10日間の拘留が認められることになります。それ迄の3日と、この10日とは大体は警察の留置場に留置されます。留置場は警察署の中にあり、取り調べをする警察官と同じ仲間が管理していますから本当は警察とは別の場所にある拘置所に拘留すべきですが拘置所は施設が足りない為止むなく留置場が使われています。でも政治犯など注目をあびる事件の被害者は大体拘置所に収容されます。
 10日間の間に警察官が、時には検察官も取り調べを行います。10日間ではとても取り調べが終わらないという時には検察庁は裁判所に対してもう10日間の拘留を請求します。(これを拘留延長といいます)裁判所は殆ど無条件に認めますから結局被疑者は逮捕されてから23日間留置場にいることになります。
 23日間を過ぎるともう取調べの為に拘留することはできません。起訴するか、釈放するか二者択一です。
起訴された場合は裁判になりますから、裁判が終了するまで、今度は裁判所が自ら拘留します。然し、裁判が終わるまで例えば2月も半年も拘留されることは大変ですから保釈によって釈放されることができます。保釈が認められる否かは、被告人が起訴事実を認めているか否か、実刑判決が予想されるか否か事件の重大さによって異なります。
最後に判決があります。死刑判決なら絞首台に、実刑判決なら刑務所に、執行猶予付きなら娑婆へ戻ることになります。