法律よもやま話23  

弁護士 松 原 三 朗 クレアヒルだより 第29号(平成20年8月)

  

   

  最近、携帯電話の出会い系サイトを通じての子供の性犯罪被害が増え、社会問題となっています。そこで今回は、性犯罪についてお話します。性的行為が犯罪となることを定めた法律、条例は概ね刑法、売春防止法、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(略して児童買春法といいます)、児童福祉法、青少年健全育成条例です。
 刑法上の性犯罪は強姦と強制わいせつが典型です。強姦は、暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫することです。
 13歳に満たない女子を姦淫した場合は、暴行又は脅迫を用いなくても、例えばその女子の同意があった場合でも、強姦罪が成立します。強姦は、姦淫即ち女性性器に男性性器を挿入する行為ですから、対象は女子です。男に対しては何をしても強姦罪は成立しません。
 それでは女子は強姦の犯人とはなり得ないか、という問題があります。先程の強姦の定義からすると、女子に男性性器はありませんから、およそ女子には強姦の犯人とはなり得ないと考えられます。
 然し、例えば知的障害があって、物事の是非の判断が全くつかない男子をそそのかして女子を強姦させたという場合は、知的障害のある男子をいわば道具として使った女性による姦淫です。これを間接正犯といいますが、この場合女子にも立派に強姦罪が成立するとする最高裁の判例があります。
 強制わいせつは、強姦と同じく13歳以上の者に対し、、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすることです。13歳未満の者に対しては暴行又は脅迫を用いなくても、強制わいせつとなることは強姦と同じです。強姦と大きく異なるのは、対象が女子だけでなく男子も含まれることです。則ち男の子に対しても、無理矢理エッチなことをすると、強制わいせつ罪が成立します。
 売春とは、対価(一般には殆どお金)を得て不特定の相手方と性交をすることです。従って、無償であれば不特定の相手と性交を重ねても売春ではありません。
 逆に対価を得ていても特定の相手とのみの性交であれば、売春ではありません。従って、いわゆる2合さん、お妾さんのするパトロンとの性交は例え毎月お手当を頂いていても売春ではありません。
 売春防止法は、昭和32年に施工されました。それ迄は、いわゆる赤戦地帯といって、売春婦を常時置いて客を迎え入れる施設が密集している地域があり、売春は違法ではありませんでした。実は売春防止法ができた今でも、売春そのものは罰せられません。
 売春防止法第3条は、「何人も売春をし、又はその相手方となってはならない」と定められていますが、これは訓示規定であって、これに違反したからといって売春した者もその相手となった者も罰せられることはありません。
 売春に関して罰せられるのは、売春を管理する者です。例えばソープランドの経営者は売春を管理する者ですから罰せられますが、ソープ嬢やその客は何ら罰せられることはありませんので安心してください。
 もっとも私は決して勧めている訳ではありませんので念の為。すみません。ついつい今迄の話が長引いてしまいました。児童に関する部分は次回にします
 三浦さんについて新たな証拠が出たのではないか、だから再び逮捕されたのではないか、との推測がありますが、私は新たな証拠はないと思っています。むしろ、せっかく苦労して捜査して集めた証拠でカリフォルニア州では充分有罪と出来たのに、なまじ日本の裁判所に任せたお陰で無罪となってしまったが、一事不再理の法律が改正されたので今度はカリフォルニアに引っ張ってきて有罪にしてロス市警の面子を守るのだ、というのが本音ではないか、と推測しています。