法律よもやま話3    

弁護士 松 原 三 朗 クレアヒルだより 第9号(平成14年1月)
        

   

 今回は民事再生法について少し詳しくお話します。
 松江や出雲のパラオなどにあるサティを経営するマイカルが民事再生法の申請をしたことは、皆さんもテレビや新聞で報道されたことからよく御存知のことと思います。やれ破産だ、やれ民事再生法だといっても、皆さんには余り縁のない話だったかもしれませんが、毎日のように買い物に行く店が民事再生法の申請をしたと聞くと、何となく身近な問題として考えるきっかけになったことと思います。このよもやま話を読んでくださる皆さんは民事再生法に関しては「相当詳しい人」と近所で評判になること間違いなしです。
 前回お話しました破産は会社を精算して消滅させてしまうことを前提とした手続きですが、民事再生法は読んで字の如く、会社を再生させることを目的とした手続きです。会社の経営が、その事業事体はなんとか利益が出ているが、何しろ借金が多すぎて稼いでも借金返済に注ぎ込まざるを得ず、益々赤字がふくらみ、いずれは倒産だ、というような状態の時はこの法律の出番です。
 具体的には、例えば10億の借金を抱えているという会社があるとします。民事再生法で「再生企画案」というものを作って、この10億円の借金を減額させてもらいます。
この場合普通は、
(ア)100万円以下の借金は半年後に全額払う。
(イ)100万円以上の借金は半分を支払い、残りの半分は、免除してもらう。
  但し、支払い方法は、半年後に支払うべき額の半分(全体の4分の1)を支払い、残りは5年間の分割払いとする。というような内容となります。この案で100万円以下の借金が全部で6,000万円あり100万円を超える借金が9億4,000万円だとしますと
   6,000万円+9億4,000万円×0.5=5億3,000万円
に借金が軽減されることになります。これがもっと厳しくなると、
(ア)50万円以下の借金は1年後に全部支払う。
(イ)50万円を越える借金は3割を支払い、7割は免除してもらう。
  但し、支払い方法は、5年間の均等分割払いとする。というようなものもあります。
 この例ですと、50万円以下の借金が全部で2,000万円あり、50万円を越える借金が9億8,000万円だとすると、
   2,000万円+9億8,000万円×0.3=3億1,400万円に借金が軽減されることになります。
 この例では、10億円の借金が3億円余りに減額となるので、会社の再建が容易になります。
 なお、再生手続開始後に生じる債権は、カットの対象となるものではなく、通常の再建として支払ってもらうことになりますが、再生手続に入るような会社では、信用が出来ないとして取引を中止してしまうこともあります。その為、再生会社では現金取引を余儀無くされ、銀行や支援企業の応援がなくては事業継続は不可能です。マイカルの例では、第一勧銀やイオンが応援しています。
 他方、債権者にとっては、このように本来の債権を大幅にカットされてしまいますから、民事再生法の申請をされたら大変なことになります。そこで「再生計画案」に示された債権のカットを認めるか認めないかが「債権者会議」に諮られます。債権者会議で出席債権者の半数以上で、且つ総債権額の半分以上の賛成があれば、再生計画案は裁判所によって認可されます。そうなると、法的にも債権はカットされた内容と提示された支払い方法に拘束されてしまいます。
 もし、債権者の多くが反対して「再生計画案」が否決されますと、あとはその会社は破産しかなくなります。破産となると会社は消滅しますが、破産手続きで債権者に支払われる額は10%以下で、どうにかすると2〜3%か0ということもあります。
 結局、債権者は泣く泣くでも、まだ民事再生法の方がましだとして了解せざるを得ないのが実態です。  
 民事再生法で会社が残れば、雇用の確保や納入業者が引き続いて商売が出来るといった地域経済に与えるプラス面も大きなものがあります。
 松江や出雲のサティが残るか残らないかは地元にとっては大変な問題です。挙げて存続運動を行う所以です。でも、その影で大幅な債権カットに泣く業者さんのいることも忘れてはならないことです。