法律よもやま話5    

弁護士 松 原 三 朗  クレアヒルだより 第11号(平成14年7月)
     

    今回は離婚の話です

 離婚は最近、というより私が弁護士になった25年前頃から弁護士の扱う事件の担当の割合を占めています。
 最近何故離婚が多いかというと、1つには女性の経済的な立場が強くなり、離婚しても生活に支障がないこと、2つには女性も男性も価値観が変り、一度しかない人生をいやなパートナーと我慢しながら過ごすことの馬鹿らしさに気づいたこと、3つには離婚歴があっても、その人の人格や社会的な立場にいささかも影響がなくなったこと等々に起因すると思います。
 かく申す私も(今のところは全くそういうことはありませんが)もし、妻の顔をみるのもいやになったとすれば、さっさと別れますし、妻が離婚を希望すれば(喜んでとまでは言わないまでも)無条件で応じます。夫婦というものはお互いの信頼関係から成り立つもので、市役所の戸籍簿など、極端な話どうでもいいことだと考えています。
 私に子供が3人のいますが、娘でも息子でも結婚にも一切干渉しませんし、離婚すると言っっても止めないでしょう。むしろ相手がどうしてもいやなら離婚を勧めるかもしれません。
 誤解のないよう念のため申し上げますが、私は決して夫婦というものを軽んじている訳ではありません。むしろ相手の人格を尊重し、二人の関係を大事にして、より充実するよう努力すべきだと思っています。それでも一緒に生活する中で、どうしても価値観が違ってパートナーを理解できなくなったら、我慢して一緒にいることはない、ということを言いたいのです。
 離婚には協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの形があります。
 協議離婚は文字どおり夫婦が協議した結果離婚することになったら、離婚届を市町村役場へ提出すればそれで終わりです。離婚届の用紙は婚姻届と同様に市役所に備え付けてあります。
 協議離婚では未成年の子供がいる場合は、必ず親権者を妻か夫かに決めて離婚届に記載する必要があります。離婚することは双方了解したものの、子供の親権者をどちらも主張して譲らず、結局協議離婚ができないということはよくあります。極くたまに、どちらも子供を引き取らないと言って協議離婚が成立しない例がありますが、これはひどい話です。
 協議離婚ができない時は調停の申立をして、調停離婚をすることになります。調停は家庭裁判所の場所を借りて、男女各1名の調停委員を間に入れての話し合いをする手続きです。あくまでも話し合いですから、どちらかが頑として応じない場合は調停は不成立となります。然し、本人同士の直接の話し合いと違い、公平な第三者(調停委員)に話をして相手方に伝えてもらい、相手方の話も調停委員を通じて聞くことになるので、気持ちも穏やかになって話がまとまることがよくあります。
 調停が不成立の場合や相手が所在不明の為に調停ができない場合は、裁判で決着するしかありません。裁判で離婚んが認められる為には、相手の側に離婚原因となる非があることが必要です。自分に好きな人ができたから離婚したい、というのは駄目です。逆に相手はこちらの浮気を理由に裁判離婚することはできます。離婚原因として認められているものは、不貞行為(浮気)、暴力、浪費、行方不明、強度の精神病等々沢山あります。以前は裁判官は堅物の者が多く、一旦結婚したからには少々のことは我慢しなさいとして、なかなか離婚を認めない傾向がありましたが、最近は比較的簡単に認めています。
 さて、皆さんの家庭は円満ですか?