改修工事について

 考察 1   気象条件における塩害地域とその他の地域の違い          

  海岸地域とそうでない地域では鉄部のさび方やものの痛み方がずいぶん違うといわれます。海岸に面している町は多数ありますが、南東に海があるのと北西にあるのでは大違いです。冬の季節風をモロに受ける地域では、山間部や田園地帯に比べて数倍あるいは数十倍の塩害を受けているかも知れません。という事は、のちのNO.3の資料でも解るように海岸部と田園地帯では例えば塗装の期待耐用年数(これくらいの間は、大丈夫だろうという期間)が、違います。同じ予算塗装の同じ建物では塩害地域の建物が早く傷む、という事です。
 塩害で傷みやすいもの、取り替えにくいものは“ 鉄 ”等を避け、ステンレス・塩化ビニール・FRP等、塩害に強いものを使わざるを得ません。
 それが、余分な維持費や修繕費をかけずに長く持たせる事、いつまでも快適な使用をすることだと思います。

 身近な例を挙げてみましょう。                                  

 考察 2   コストとメンテナンス(イニシャルコストとランニングコスト)

学校のプールの手摺りを例にとり鉄製のフェンス、アルミ製のフェンス、そしてステンレス製のフェンスを比較しながら話をしてみましょう。ただし、塩害の強い地域という想定で行なっています。(数字は目安です)

材 料

コ ス ト

さ び

強 度

美観

メンテナンス(維持管理)

PCフェンス

6000〜8000/M

3〜6年

10年でぼろぼろ

腐らなければ強い

悪 い

2〜4年毎に塗装しなおし。数十万円づつ。

10年ぐらいで取替え。

アルミフェンス

15000〜25000/M

(見積 18000)

10〜20年

やや弱い

まあ良い

将来は取替え。15年-20年くらい。

ステンレス

フェンス

35000〜50000/M

(見積 38000)

半永久にさびない

強 い

良 い

ほぼメンテナンスフリー。(何もしなくて良い)

    ※ 本当に安いのはどれでしょうか。  

      20年後を考えれば、(延べ長さを120mとして)
      PCフェンスは取替え2回、塗装6回
          (120万×2回)+(40万×6回)=480万円
      アルミフェンスは取替え1回
          1回3万/mとして  120m×3万=360万円
      ステンレスフェンスはそのまま
                                0円

           今の値段としてこれくらい違います。

 取替えというのは、足元の固定部分を壊してやり直しますので、左官工事・シール工事、溶接工事、産廃工事、吹付け工事、金属工事がかかります。
  予算が限られれば設計者は、予算内で押さえるため止むを得ず、安かろう悪かろうの材料を使わざるを得ません。ポイントを押さえ安い材料でいい仕事(     建物等)を残すのが私ども設計者の固有技術ではありますが、予算には勝てません。気象等の条件が他地域より厳し場合は、建物の維持管理によりコストがかかる事をご理解ください。又、これを機会に、“イニシャルコストよりランニングコスト、さらにはメンテナンスフリー”という考え方をご理解いただけたらと思います。

                     

考察 3   故 障(EX.標準工期と適正工事)                      

 メンテナンスは建物を安全に維持管理するために必要なものです。計画的に修理・改修されると良いと思います。そうすれば、補修や修繕が取替え程度に楽に考えられると思います。さて、故障にも経年劣化によって現われるもののように予想できるものと、雨漏り等のように、ある日突然、現われるものがあります。マンションの場合も、考え方は変わりないと思います。 
 そして、もうひとつの故障は、人為的なもの、例えば設計の不備や施工不良施工時の勘違いや納まりの不良、材料の不良等人為的なミスも多いと思われます。しかし、いちばん恐いのは、止むを得ない人為的ミス...。 

      例えば“ 工期 ”です。

コンクリートの例を挙げれば、コンクリートが98〜99%乾燥するのに、1年以上かかるはずです。今、1?のコンクリートの中に180sの水が入っているとします。1年たっても2?以上の水が残っています。ましてコンクリート打設後1ヵ月や2ヵ月ではどうでしょうか。この水分が、吹付を弱らせたり、シールの密着を悪くしたり、仕上げのモルタルの初期の接着 不良を起こしたりする事もあります。私は、これは単純な施工のミスではなく、設計者や発注者も考えなければならないと思います。同じ規模の工事でも、春発注の6ヵ月と、(5月〜10月)秋(10月〜3月)では実働日数、作業能率、コンクリートの乾燥速度、職人さんの人数、(年度末はいない)仮設費(照明・養生・暖房等)、仕事の出来上がりも違うはずです。
 一般の仕事も改修も冬を嫌います。出来るだけ良い環境でスタッフに仕事をさせてあげたいと思います。工期を工事期間と考えずに発注時期と期間と考えてもらえば良いと思います。
 さらに良い仕事を確実に行なうために少し余分に工期をとらせて頂けたら、と考えます。これは、設計にも施工にも言えることですが、それが“良い仕事”のための適正工期ではないかと思います。
 ちょっと話がそれましたが、工期に追われて不完全乾燥でも止むを得ず吹付を行なう、あるいはシールを行なう、それが3年後あるいは5年後の故障の遠因になるかも知れません。解っていても私どもには工期を延期する事が出来ないのです。

 

考察 4   改修工事と追加工事

 二次診断は調査と集計、原因究明、不足なら再度調査、別の角度からの調査サンプル不足部分の調査と進んでいきます。しかし、全数調査ではありませんからどんなに時間をかけて計画的に行なっても、工事中に不良箇所を発見するかも知れません。パイプスペース等を壊してみたら当初の見込みと違っているという事もないとは限りません。工事中においても、多少の追加変更工事の可能性をお持ち頂けたら、と思います。施工業者さんも損をしてまでやってはくれないでしょう。私どももそれでは、言いたいことも言えなくなってしまいます。追加工事という言い方がふさわしいかどうかは解りませんが、変更の可能性はあり得ると思います。 

以上、「改修工事に対してのレポートを。」との事でしたので、思うままに書かせて頂きました。失礼も多々ございましたでしょうが、御一読頂ければ幸いに存じます。                       

                         (有)江角建築事務所

                            江 角 健 治