手紙の注意点

●尊敬語と謙譲語の使い方
　“尊敬語”は、相手のことや、相手に近い人や物について敬っていう言葉で、自分と自分に近い人や物についえ、へりくだっていう言葉が“謙譲語”である。

●相手と自分の呼び方
　話し言葉と書き言葉は、おのずから違ってくる。どんなに親しい人あての手紙でも、相手の関係していることに関しては敬称を使いことが鉄則である。
　これに対して、自分と自分の関係していることを述べるときにはへりくだったいい方をしなければならない。
　相手の敬称で、そんな場合でも失礼にならないのは“様”。“殿”は敬称だが、目下に使う言葉である。女性の場合は、“様”か“先生”。“さま”とひらがなで書くのは、目下に限られるので気をつけたい。
　また、会社や学校などの団体には、“御中”をつける。ほかに画家は画伯、詩人・歌人は大人。俳人・茶人は宗匠、高僧は上人、歌舞伎俳優は丈とするほうがよい。

●尊敬語・謙譲語

原形	尊敬語		謙譲語
原形	一般	改まった場合	謙譲語
いう	いわれる	おっしゃる	申す・申し上げる
いる	いられる・おられる	いらっしゃる・おいでになる	おる・おります
する	される	なさる・あそばす	いたす
思う	思われる	お思いになる・おぼしめす	存じます
聞く	聞かれる	お聞きになる	伺う・承る
見る	見られる	ごらんになる	拝見する
行く	行かれる	おいでになる・いらっしゃる	まいる
来る	来られる・みえる	おいでになる・いらっしゃる・おみえになる	あがる・伺う
たずねる	たずねられる	おたずねになる	伺う
知る	知られる	お知りになる・ご存じでいらっしゃる	存じている
もらう	もらわれる	おもらいになる・お納めになる	賜わる
食べる	食べられる・召しあがる	お食べになる・お召しあがりになる	いただく・ちょうだいする
与える	与えられる	お与えになる・くださる	あげる・さしあげる

●相手と自分の呼び方

	相手側の呼び方	自分側の呼び方
相手・自分	あなた・あなた様・貴台	わたし・私
父	父君・御父君・御父君様・ご尊父様・亡き父君様	父・家父・老父・亡父・亡き父・先代・おやじ
母	母君・御母君・御母君様・ご母堂様・亡き母君様	母・老母・慈母・亡母・亡き母・おふくろ
両親	ご両親様・御父母様・お二方様・ご両所様	父母・両親・老父母・老人たち
祖父母	ご祖父（母）様・ご隠居様	祖父・祖母・亡祖父（母）
息子・娘	お子様・お坊（嬢）ちゃん・ご子息様・ご息女様・ご令息（嬢）様・ご愛児	子供・倅・娘・長（次・三）男（女）・愚息（女・娘）・豚児・拙女
夫	ご主人様・旦那様・夫君	夫・主人・宅・あるじ
妻	奥様・御奥様・令夫人	妻・女房・家内・愚妻
物	ご好意の品・ご配慮・けっこうなお品・ご厚志・美菓	心ばかりの（お恥ずかしい）品・粗菓・粗品・寸志（目下）
意見	ご意見・ご所感・お申し越し	私見・私考・私案・考え
住宅	貴家・貴宅・お宅	小宅・拙宅・私宅・当方
住地	御地・貴地・御地方・そちらさま	当地・当地方・当所・こちら

●脇付
　脇付は、いっそうの尊敬を加え、へりくだった気持ちを表す言葉で、宛名の下や、左下に小さく書き添える。
一般……侍史（秘書あての意）・机下・座右・硯北（けんぼく）・足下・案下
目上……侍史・玉案下・膝下（両親のみに使う）・台下（高官のみに使う）
目下……足下
女性から男性へ……御前・御許に・おそば
男性から女性へ……御許・御許へ
　この脇付は、便せんと封筒のとを同じものにする。
　一方、封筒のみに使う外脇づけには、
他見をはばかる……親展・直披・親披
急ぐ場合……至急・急用
返事を要する……拝答・待貴答・乞返答
などがある。
　ハガキには脇付をしないのがふつうである。また敬称に「御中」や「各位」を使ったときも脇付は用いない。さらに、事務用や凶事にも脇付はいらない。

●忌み言葉
　手紙にかぎらず、お祝いや弔祭の場合、不吉だと忌み嫌われるのが忌み言葉である。とくに改まった手紙や、年配の方あての手紙のときは十分に注意し、使わざるをえないときはいい替え語を用いる。

出産	四・死・流れる・消える・枯れる・滅びる・破れる・くずれる・逝く・浅い・薄い
入社入学	落ちる・終わる・やめる・変更・中止
賀寿	四・死・病・病気・朽ちる・枯れる・倒れる・衰える
新築	火・煙・赤・緋・燃える・焼ける・倒れる・くずれる・つぶれる・こわれる・散る・飛ぶ・傾く
開店	散る・閉じる・枯れる・さびれる・つぶれる・敗れる・落ちる・失う・しまう・傾く
弔事・災害	また・なお・ふたたび・重ねて・追って・再三・かつ・しばしば・かえすがえす・くれぐれ・つぎつぎ
結婚	別れる・切る・去る・終わる・離す・帰る・飽きる・もどる・破れる・あせる・冷える・滅びる・嫌う・浅い・返す・退く・割れる・こわれる・追う・思いきって・折り返し・重ね重ね・ふたたび・またまた
いい替え語	打つ→なでる・終わる→開く・塩→波の花・しょうゆ→むらさき・するめ→あたりめ・すり鉢→あたり鉢・梨→ありの実