中国留学館/留学生コラム「徒然大連

「徒然大連 その5」(2005年04月09日/更新)

楊さん。
スイスホテルのアパートメントに、楊さんという人が暮らしている。彼は、50歳半ばぐらいで、家族は世界各国でそれぞれ暮らしているらしい。

どういった仕事をしているのかは、聞いたことがないので知らないが、なんだかいつも暇そうに、ロビーをうろうろしている。フロントで仕事をしていると、1日に何度も楊さんを見かけるので、そのたびに挨拶をするのだけれど、楊さんは少しだけ気まずそうに、はにかみ笑顔で、やあ、と言う。

けれど(地味だけれど)、おしゃべり好きの楊さんは、暇そうな従業員を見つけては、静かに、静かに、なんとも壮大な世間話を始める。 日本にも10年間住んでいた楊さんは、日本人と同じ日本語を話す。最初に楊さんに会う日本人は誰もが楊さんを日本人だと思う。そのくらいすごい。日本語、中国語を含め、4ヶ国語を何の不自由もなく操る。

そんな楊さんが私に言った。 中国は私の故郷であるけれど、何十年も色々な国で暮らしてきて、帰ってきたときの中国の変わり様といったら、凄まじい。まるで違う国みたいだ。

楊さんは、良いとか悪いとか、そういったことは決して言わない。ただ、事実を淡々と語る。けれど、私は最近思うようになった。 自分の故郷をまるで違う国と言う楊さん。楊さんの中の、いつまでも変わらない故郷の姿は、もうこの世の中には無いのかもしれない。

おしゃべり好きの楊さんは、今日も明日もロビーをうろうろ。語っても語っても、語りつくせない、苦い愉快な物語を抱えながら。

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