中国留学館/留学生コラム「徒然大連

「徒然大連 その15〜忍び寄る侵略者、それは〜」(2005年11月26日/更新)

私はかねてから、大連を去るときは、きっと何かしら感慨深いものがあるんだろうなあ、あるに違いないっ、などと思い込んでいた。全くの勘違いであった。私にそんなセンチメンタルな気持ちは皆無であり、無感動に北京行きの列車は発車し、私はみかんの皮をむく。

この時、私は一人静かに戦っていた。なるべく体を動かさず、眉間にシワを寄せて、あるものと戦っていた。それは何か。それは昼に食べた北京ダックである。

北京ダックのギトギト油が、私の胃の中で、今まさに文化大革命中。もしくは、聖域無き私の胃の構造改革だ。なるほど、確かに痛みが伴う。

私は胃を抱え、高校の頃授業で習った愛新覚羅溥儀を思い出した。

美味しいと思って(仲間だと思って)食べた(手を結んだ)北京ダック(関東軍)。しかし、北京ダックはしょせん油のかたまり(しかし、関東軍はしょせん侵略軍)。時すでに遅し。戦う力はギトギト油に奪われ、あとは静かに、嵐が過ぎ去るのを待つだけ・・・。嗚呼、なんという哀れ。

私の前に座ったおやじは、列車が発車するとおもむろに、カルフールで買ったであろう出来合いのお惣菜を広げ始めた。最後に大切そうに白酒の瓶を取り出す。どうやら宴会が始まるらしい。

なるほどね、と私は思う。どうせ硬座の旅では寝ることも出来ないし、本も飽きる。お酒を飲むっていうのは良い過ごし方だ。

でもねぇ、私、どうしてもあの匂いがダメ。甘い匂いが、ダメ。ねっとりした匂いが、ダメ。しかもこっちは一生懸命関東軍と戦っているところだっていうのにぃ・・。

恨めしそうにおやじを見つめ、私は友人手作りの愛の野菜ジュースをごくごく飲み、身を硬くして眠った。

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