【安心して家を建てるには】

建てる方法とそれぞれの現状・利点・欠点・実例
[建売住宅] [住宅メーカー] [設計施工(大工棟梁)] [設計施工(工務店・建設会社)]
[設計・監理と施工を別にする] [増改築・耐震診断]

建売住宅


一般に土地が売れにくい現状で、土地をミニ分割して、住宅を4、5棟から10数棟単位で造って販売することが多くなっている。同時に同じような住宅を造るので、1戸だけ建てる場合よりも建設単価は安くなる。が、土地付き建売住宅はまず土地の利益を出さなければならない。土地を分割して造成するのにも費用がかかる。
また、住宅の建設にも利益を出さなけばならない。
土地付きの建売住宅とはそんなものである。
私たちの団体で永年行ってきた建築相談でも土地付き建売住宅のトラブルが非常に多い。



土地付き建売住宅は、でき上がった建物を見ることができる。また、工事中に契約をすることもあり、その場合には工事中の建物の状況が見える。そういう利点がある。



しかし、見られない場所が、沢山ある。具体的に言えば、基礎(布基礎)下部が、

この頃、買手もなれていて、先のとがった鉄筋等で基礎の周りの土を突いてみて、「つっかえたら良い基礎だから可」としたりするが、更に悪質でなれた売手は何かの細工をして鉄筋がつっかえるようにしていたりする。基礎の上には土台があるのだが、見えない場所で確認できないことがあるとこわい。



束柱の間隔を広くし材料を節約したので、契約時には分からなかったけれど、1年後に床が下がってしまった実例もある。

根太は普通45×45mm以上で300mm以下の間隔でなければならないのに、45×30mmを450mm間隔で施工すると、何年か先には床がたるみ傾斜する。
見えるところの和室の柱とか窓枠等は標準以上であっても、見えないところ、そして、確認できないところ、大壁の中の柱は見えない。火打ち、筋かい、などは部材を大きくするだけでは意味がないので〈耐震用金物〉でしっかり接続しなければならない。これらの事柄は、専門的な〈計算と体験〉があっての技術であることを、理解していただきたい。



住宅メーカー(展示場・チラシ・営業)



住宅メーカーの住宅についても、前項と同じような欠点を指摘することはできるが、建売業者はどではない。
販売合戦は熾烈をきわめるので、展示場等で名刺をだしたり、住所電話番号等を教えたりすると、連日連夜メーカーの担当営業者が来訪することになる。
そして、来訪しては、雑談しながら、買手の要望や希望を聞き、それらを入れた図面を作成してまた来訪する。
そして買手の反応を見て、変更した図面をもってくる。見積りを出したり、図面を何回も何回も変更したりする。
あげくには担当営業者が「自分の任期が4月までだから…」とか「会社のサービス期限だから…」などと実に多種多様な営業ノウハウが用意されている。
また、あるメーカーでは社員に、30〜40代の夫人は何が好きか、どんなデザインが気に入っているかを徹底的に教えているという。
そのうちに担当者が上司、さらに上の部長等を伴い頻繁に来訪する。すると買手側の心理として当然「これだけしてもらったから…」とか「買わなければいけない気がしてくる…」という状態になる。
以上のようなケースが実際にある。住宅という買い物は一生に一度の買い物なのに、メーカー側の心理作戦に負けて気分で買うようなものではない筈である。断わる勇気と意志を持っていただきたい。



住宅メーカーは、会社としては、建売業者や工務店より「大きい会社」であることが多い。そして、会社は社会に貢献することも目的である。
大きい会社だからこそ、できる研究とか技術とかもありうる。
買手が現物を見られること、大きい会社だから「悪いことはしないだろう」ということもある。
住宅メーカーは会社が大きいほど、信頼を大事にする。



その1

間取りが出来合いなので、自分にピッタリな間取りが選びにくい。買手が自分の間取りを注文すると割高になる場合もある。
結局、買手がメーカーの間取りに同調する生活を余儀なくされる。洋服に自分の体を合わせるようなものである。
メーカーの間取りをあなたの土地に合わせるために庭がなくなったり、自然との関係をこわすことになる。住宅は、「家庭」と言うように、建物だけをみてはいけない。
あれだけの展示場、チラシ新聞等の広告、あれだけの営業マンを含んだ社員等の費用は全て買手が負担するものである。
これは、住宅メーカー以外の建売住宅や工務店の一部にも言えることであるが、住宅というものは、買手にとっては「一生に一度か二度」のことである。
したがって、一度住宅を買った人は、もう一度買うことははとんどない。また、住宅というものは買った人が知人に「売手を紹介する」ことがあまりないものである。
つまり、一度買った人は次の「お客」となりにくいのである。
売手(建売住宅や住宅メーカー等)は、自分が作った住宅の評判による信頼は大事である。
しかしながら、現状では、信頼よりもっと大事なことは、自社の住宅を買った方の紹介よりはるかに多い〈まだ買っていない新しい客〉があるというのが現状の住宅産業である、ということも常に忘れないでいただきたい。
売手の次のターゲットは「買った人が紹介する人」ではなく、全然別の新しい客である。

その2
「建売住宅」と同様であるが大工、左官、塗装等の職人(職人のグループ)の上質な人達を常時用意しておくことができにくいのが現状である。
住宅というものは、大工を中心に各職人・職方がグループで共同して作業するものである。
利益を求めるため、下請に施工を丸投げする建売住宅や住宅メーカーは、上記の共同作業をする職人たちを常備しにくいのである。



設計施工について(大工棟梁)



大工が設計施工(設計監理なし)で住宅を施工する場合、まず、買手(建主=以下買手と記す)と話をする。買手が「コウ、コウ、コウイウ家、」と言って依頼する。大工が「ソウ、ソウ、ソウイウ家、」と言って受託する。この場合コウ、コウ、コウイウものを明示するものははとんどないのが現状である。(簡単な図面やメモ見積書等がある場合もあるが、これらコウ、コウ、コウイウものを簡単な図面では明示できないことである)そして、工事の金額を決め、契約をする。
それから、大工は買手が言ったコウイウ家を、自分が理解したソウイウ家として施工する。
昔は、買手は金持ちで、大工が使用した材料、手伝ってもらった他の職人の手間賃、大工の貸金等を支払う。買手が現場を見て、気に入らなければ、直させる。もちろん、その金額も買手が支払う。(こういうことは現在ではありえないことである)だから、木材はじめ材料が良くて職人の腕が良ければ良い住宅になった。
一般に住宅にはどういう工事があるであろうか?

建築工事としては
@仮設工事 A基礎工事 B木工事 C屋根工事 D板金工事 E左官工事
Fタイル工事 G金属建具工事 H木製建具工事 I金物工事 J塗装工事
K内装工事 L外装工事 Mガラス工事 N雑工事 等の工事がある。

外構工事としては
@外棚、内扉工事 A植裁工事 B駐車場工事 等の工事がある。

そして他に設備工事として
@電気設備工事 A給排水衛生設備工事 B空調冷暖房設備工事 C換気設備工事
Dガス設備工事 等の工事がある。
これらの各工事が、お互いに関連し、後先、入り交じって工事が進み、施工される。これらの工事の進行のなかで、大工がいるうちにする工事は建築工事では@・A・Bまで、設備工事は各工事の初めの部分でしかない。大工が現場にいるときにする工事は「コウイウ家」「ソウイウ家」の工事の進行の1/3しかないのである。
大工は一般には自分の作業(木工事)が終わったら毎日現場にいることはない。だからその工事の面倒を最後まで見ることは、普通はしない。次の仕事で他の現場に行ってしまい、せいぜい他の現場の合間に元の現場に来て見て回るぐらいである。
分かりやすくたとえれば昔は1,000万円の住宅とすると、電気が100万円、水道が100万円、冷暖房ガスなどはわずか10万円(設備工事が210万円)であった。大工の作業が半分以上を占めていた。だから、大工は住宅の工事の半分以上は立ち会うことになっていた。
今では、大工の作業が500万円とすると電気が300万円、水道が200万円冷暖房ガス等が200万円(計700万円)の割合になっている。つまり、住宅の工事金が1500万円で大工作業が500万円=1/3になる。大工は住宅の工事の1/3しか立会いしていないことになる。
もちろん、自分の作業が終わっても、工事が全部終わるまで責任を持って面倒を見る大工がいないとは言わない。が、そういうことは稀である。
これが現状である。



いわゆる「各職人の各々の作業等」が「見ているうちに段々でき上がって行く」等が利点と言えるかもしれない。



さきの大工(棟梁)の現状が欠点でもあるが、もう一つの欠点がある。(これが今多いいわゆるトラブルである)買手の「コウイウ家」と大工の「ソウイウ家」が違っていることがあるのである。
住宅の完成までには、先はどあげた20種くらいの工事があって、それらが何百何千の作業をし、完成するのである。だから何時間、何回話し合っても話し合いだけで「コウコウ」を理解し合えるものではなく、買手の「コウイウ家」を大工が自分なりに分かったと思っただけであることが多い。
そして、もっと悪いことは、「コウイウ家」と「ソウイウ家」の違いができ上がってはじめて買手に分かることが多いのである。
昔の買手はでき上がったものを見て「これは違う、直せ」と言う。すると大工が「材料代手間賃は?」「払うよ」「ハイ」で、でき上がって「よくできた」ということだったかもしれないが、追加の支払は現在はとんど不可能である。「コウイウ家」と「ソウイウ家」の違いを明確に証拠だてるものがまったく無い。トラブルは必然である。



設計施工について(工務店・建設会社)



工務店(建設会社=以下略)の設計施工は大工と少し違う。
組織が大工より大きく、各工事の施工者もまとまっていることが多い。
木工事(大工)も例えばAさんを中心にAl・A2・A3のグループ、またBさんを中心にBl・B2・B3のBグループ、Cグループ等をも傘下に用意している。各工事の職方も揃っている。
(逆に言えば大工や職方が揃っていない工務店や建設会社は今ごろやっていけない時代である)
○○工務店○○の会とかいって職方が集まり、勉強会を開くなどしていることもある。



工事の初めから完成まで、職方や職人でない現場主任を用意して各工事を管理することである。
買手の奥さんが現場で職人に「アアダコウダ」と言って職人からうるさがられることもなくてすむ。
工事契約書についても、設計図書(設計図と各書類)を提示して見積書を提出して金額を決定し契約をするのが多い。だから、「コウイウ家」と「ソウイウ家」に違いも少なくなる。

その設計図書も安い。場合によっては、タダの場合もあるが、これは利点だけではない。
その工務店(建設会社)の設計図書は誰が書くのであろうか?
その工務店の所員、例えば設計部の社員であるか?
その工務店から依頼された「設計図が書ける人」か?
どちらかである。一般に、図面というものは
 (イ)なにも考えないで(言われるまま)書いてアルバイトでも1枚数万円かかる。
 (口)図面はその住宅の金額を決定するものである。
 (ハ)図面はその住宅の全部を決定するものである。
 (二)なので考えないで書けるものではない。むしろ考えて考えて更に考えて書くものである。
 (ホ)したがってアルバイトでは、もちろん満足される図面は書けないことも多く、社員でも経験豊富な     建築士が書く必要がある。
 (へ)または、依頼された「設計図が書ける人」は優れた人であるべきである。



さて、工務店から図面を書くよう依頼された所員や「設計図を書ける人」はその工務店から給料や代金を貰っている。ということは、図面を書く人は売手の不利益になることはできない。
したがって、この設計図書は買手の要望を完全に表わしたものになりにくい。現状では工務店や建設会社が設計施工する場合の図面は数枚であることが多い。
会社は当然利益を出さないといけないから、(本当は高い)図面に経費をかけにくい。
また、図面は、契約後も住宅の一切全部を決定するものであるから、沢山あることが売手にとって不利になることもありうる。
つまり、設計図善がタダとか安いことは欠点である。
買手の要望を正しく反映すべき設計図書、契約金額から細部までを決定する設計図書を書く人が売手側の人であることが問題である。また工事を監理する人が売手側の人であることも問題である。
そして、図面は誰が書くにしても、タダではない。
売手は図面代を「タダ」と言っても、その金額はどこかに入っていなければおかしい。そうでなければ売手の会社は維持していけない。


設計・監理(建築士=設計事務所)と施工(工務店等)を別にする

土地付き建売住宅の売手は、まず土地の利益、そして建設の利益を(できるだけ)多く出さなければいけない。
住宅メーカーの売手は、展示場や広告や社員等の経費と利益を出さなくてはならない。
工務店や建設会社も会社経営として利益を出さなくてはならない。
当然買手と正反対の立場にいる。トラブルがあっても取り合おうとしないばかりか、自社の弁護士を用意し、トラブルに対する備えをしている会社もある。
買手が不備を申し出ると、内容証明の返事や損害賠償等を出し買手はオドオドして泣き寝入りすることもある。現在は、市や県等の行政が、それらに対応するべく弁護士や建築士等を用意した窓口をつくっている。
悪質な売手にあったら迷わずに行政の窓口に行ってもらいたい。
もちろん、私たちに相談していただいてもよいのである。


住宅とは、買手の利益と売手の利益が正反対の者同士が契約をし、取り引きをすることである。
そして、住宅に関する作業は多種多様であるばがりかどの作業でも利益が出しにくい産業である。
だから、正当な利益以外の手段で利益を出す売手もあることになる。
そういう現状であるから買手と売手の中に入り第三者の立場で、買手の利益を守るのが設計事務所である。
まず、買手の予算計画に立会い相談をする。買手の予算と要望を反映して設計図書を作成する。
その設計図書を更に買手に説明し承諾を得た後、売手に説明して見積を依頼する。その後、出た見積書をチェック。買手と売手の契約に立合い、工事施工に関しては監理をする。
そういうことを設計事務所がする。
これが、設計監理と施工を別にすることである。



利点については、あとで設計事務所が何をするかでお話をしたい。



十分な設計・監理を買手が期待するのであるから、場合によっては選んではいけない設計事務所がある。
(イ)施工者と癒着している事務所
(ロ)技術能力が低い事務所
(ハ)気の合わない事務所
(ニ)建築確認申請など、役所の手続きの代行しかしていない事務所

それでは、どのように設計事務所を選んだらよいのだろうか。
まず、建築士事務所の過去2〜3年の設計・監理業務の実績の提出をしてもらい、その実績について、現地調査または住人にその評価を確認する方法もあるし、管理建築士の実務経験、所属建築士名簿を提出してもらい、総合的に判断して、建築主が納得したうえで選定することである。
買手が設計事務所を選ぶ一つの方法として安心できるのは、その設計事務所が団体(建築土事務所協会)に加盟していることである。

そして選んだら、その設計事務所でいろいろと相談をする。少しでも不安があったら、買手も満足できないし、その設計事務所も仕事がしにくい。何回でも話し合いをしてそれでも納得がいかなかった場合、その事務所が加盟している団体に別の設計事務所を紹介してもらうこともできる。
設計事務所もいろいろある。例えば、構造が得意な事務所、設備が得意な事務所、予算や施工に詳しい人やデザインが得意な人がいる事務所、大きなビルだけ手がけて住宅はやらない事務所…など。
紹介された事務所と話をして、まただめだったら、また他の事務所の紹介を頼めば良いのである。



増改築、耐震診断

新築に限らず、増改築の時もこれと同じことが言える。
最近、「耐震設計をしている」とかあるいは「貴方の家の耐震診断を無料でやるから…」と言って近づき、やがて工事に結びつける業者が多い。
現在建築士、および建築士事務所というのが建築に関する国家的な資格でありそれ以外はない。「耐震診断資格」とか「一級耐震診断士」というのは一切ない。耐震診断についての資格をうたうものがあったら、注意してほしい。それと同時に「耐震診断」は無料ではない。市や県が、市民県民のために補助金を出すとか無料にするとか、あるいはある団体がボランティアで無料にする以外は{無料}というのはありえない。無料とあったら注意してほしい。



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