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しまね住まいの学校 住まいに関する講演録
 
「木材について」
 
安達公一氏(株式会社こびき屋代表取締役
 
木材の特徴
木材の特徴は大雑把に言うと3つあります。

一つは「断熱性」です。
水を1としますと、木材は0.5、鉄は105です。数字が小さいほど断熱性がよいわけです。木材は実に鉄の210倍断熱性がよいわけです。橋の欄干を想像してみてください。鉄の欄干と木の欄干。冬の寒い時の鉄の欄干は冷たくて手がくっつきそうです。夏、炎天下の鉄の欄干は熱くてやけどをしそうです。木の欄干は大丈夫です。このように、木材は大変断熱性がよいのです。昔から鍋の柄が木でできているのは木の断熱性を利用したものです。木の種類によっても暖かさは違います。木材を使っていても被膜性塗料を塗って木材の特性を消した合板のフローリング(プラスチックのようなもの)と無垢の木とでは暖かさが全然違います。

二つは「調湿効果」です。
長さが3m、10.5cm角の杉の柱1本の調湿効果は、ビールの大瓶1/2本分の水分を調湿する効果があります。湿気が多いときは湿気を吸収し、逆に湿気が少ないときは湿気を放出するというエアコンのような働きをするのです。電気代不要で、音も立てずに、そこにある限り24時間働いてくれます。そしてその特性は木をたくさん使うほど高性能になります。木はそこにある限り電気代不要で、音も立てずに故障なしで働くすばらしい特性を持っています。

三つ目は「紫外線も吸収する」と言うことです。
静岡県内での調査によると、鉄筋コンクリートの校舎の子供と、木造の校舎の子供とでは、近視の率が違うという結果がでています。木造校舎の子供の方が近視になる率が低いという結果がでています。近視眼率は2対1でした。倍半分違います。
インフルエンザで学級閉鎖になる率も違うという調査結果もでています。先程言った、木材の調湿効果によるものではないかと思います。

島根大学の教授がマンションと木造戸建て住宅の比較をされたことがあります。平均寿命の違いは9歳違いました。(他の要素を考慮しても7歳は違う。)死亡原因も、呼吸器系、乳ガン、肝臓ガンの出現率に違いが見られました。子供の出生率にも違いが見られました。1組の夫婦が子供を産む数は、木造戸建て住宅は2.1人、マンションでは1.7人。全てが木造戸建てとマンションとの違いであるとは言えないと思いますが、統計的にはこのような結果が現れています。
マウス実験
静岡大学のマウス実験の結果が学会にも発表されています。マウスは裸で生まれているから、温冷の調節ができないと言うことがありますが、調査結果では生存率でも違いが現れました。

木、コンクリート、鉄のそれぞれ同じ大きさの箱20個の中におがくずを敷き、マウスを20日間入れ、その結果を調査したところ、生存率は木が86%であったが、コンクリートが一番低く6.9%でした。

また、コンクリートや鉄の箱の中に入れた場合に、本来は子育てが上手なマウスの親が母性本能が働かずに、子供の面倒を見なくなったり、かみ殺したり、壁に突撃するなどの不可思議な行動を取るようになった。臓器の発育状況も違い、一番大きな発育の違いは生殖器に現れた。やはり、生物資源である「木」が持つ力があるのではないかと思われる。鉄は地下資源である。
ある村では
岐阜県の加子母村では、宿泊施設、学校は全て木造で建てるという方針があります。加子母村には檜しか資源はないということから公共施設は全て檜を使うと言うことになっています。子供がやはり違っているそうです。のびのびとしており、風邪を引かないということです。

島根県には木のブランドがありません。たたらが発達していた結果、植林が遅れているということです。県内で流通している木材で、県産材はほんの数%である。本当の意味での「木の香の家」が建つことを望んでいます。
間伐
戦後、日本の植林は経済植林でした。経済価値のある木を育てるということを目的に植林をしました。経済的に価値のある木を育てるためには高く上に伸びるように育てなければなりません。十分に広い土地に植林をするときは上に伸びずに横に広がります。そこで、育てようとする木の何倍も植林をし、枝打ち、間伐を行って、木をまっすぐ上に伸びるように育てます。従って間伐をすることは木にとって宿命なのです。間伐が行われないために太陽の光が地面に届かなくなり、根が張らないで、もやしのような木になっています。下草が育たず、山の保水力もなくなってきているという事態になってきています。

現在、環境に優しいということで、再生紙の利用、割り箸の回収が行われていますが、果たして本当に山を守ることにつながるのでしょうか?島根県内を見た場合には、間伐しなければならない木がたくさんあります。間伐材を使うことが山を守ることにつながるのです。材料は山に一杯投げてあります。全部紙の原料です。古紙、割り箸の回収が悪いといっているのではありません。私は回収したものは中国に送ったらよいと思います。中国は深刻な紙の原料不足です。島根県と中国の友好関係確立にもつながると思います。

「山の木を使ったら悪!」というイメージが定着しているのではないでしょうか?しかし、その木が今死にかけています。山の木を腐らせたらCO2がでます。紙を燃やしたと同じことです。木を使う方が緑を、山を守ることなのです。
木材危機
かつて日本には4度の木材危機がありました。

一度目は、平安京等の遷都が多かった時期。
このときにも都の建設のために大量の木が使われました。

二度目が秀吉、家康時代。
土木工事、築城により大量の木材が使用されました。ただ、この時代には植林も行われており、現在の美林といわれるものはこの時代のものです。

三度目が第2次世界大戦及びその復興時期。
軍需物資と復興物資需要。しかしこの当時も植林はなされており、このころに植林された木材が伐採期に来ている。

四度目が、現在。
山に木はあるのだけれど、手入れがされていないために、もやしのような木になってしまっている。木を使わなければならない時代である。現在は木を使わなくなったことで、木が死にかけています。現在、木の1人当たりの消費量はアメリカの約半分です。木に携わる人も採算が取れないために、山には入らなくなっているのです。効率性のことだけを考えると日本の山はだめになる。木材は再生可能な生物資源です。これからは木材をおおいに利用し、元気な山を、ひいては元気な山村を取り戻さなければなりません。建設省では、近年、魚が棲むためには自然の素材を使うことの必要性から、木を河川に使うようになってきている。

CO2を木に吸収させ、地球温暖化を防ごうと言う動きがあるが、元気の良い木でないとだめである。木は太陽の光、水、CO2、そして土の養分を吸収しながら成長します。そのためには森林の旺盛な生命力と生長量を保たなければなりません。木にも年齢があり、体力があります。若い木の多い森林は、成長量が多いので、たくさんのCO2を吸収します。木も切った後に植林をして入れ替えることが必要です。
木の癒し効果
船員の部屋は木材をふんだんに使用しています。木材と人は大変相性が良い。仲が良い。昔から船員の居室は、必ず木材で作るという風に言われています。木材でないと、長い航海中に喧嘩沙汰が起きるそうです。学校の校舎を木造の校舎にしたら、子供達も先生方も生き生きとしていじめや不登校も減ったという調査結果もあります。

また、色々な素材の上に手を置いて、血圧と心電図を図ってみると、木材だけは万人が、例え木はあまり好きではないと言う人でさえも、血圧が降下し、心電図も落ち着いてくるという実験結果もでています。このように、木材は人間を大変元気にさせます。リラックスさせます。和ませます。そういう力を持っているようです。元々森に棲んでいた人と木は、相性が非常に良いのです。人の集まるところには必ず木があります。ヨーロッパ等の石造りの家は、元々植林を怠った結果石の文化になったのではないのでしょうか?DNAに木への愛着が刷り込まれているのではないでしょうか?神様は木と人間を兄弟のように作ったのかもしれません。20世紀は石油の時代、石油化学製品の時代でした。衣食住ともに21世紀は自然素材にかえります。やっと私たちがそのことに気づいたからです。
木の価格は高くはありません。加工する手間賃が高くなっています。

木材の約半分は炭素で構成されています。白炭は極めて炭素が純粋な炭です。昔のお屋敷には炭が埋められていました。磁気を変えると言われています。良い土地を「いやしろ地」悪い土地を「汚れ地」とし、炭を入れると「いやしろ地」になるという博士もいらっしゃいます。中国では一定の大きさの炭を輸出禁止にしました。

消費者は本物を知るか知らないかで考え方が違ってきます。消費者の知識はマスメディアからの情報(大手が発信する情報)に支配されています。小規模事業者はマスコミ的に情報発信をすることはできません。だから消費者の人には本物を知ってもらいたい。

リフォームの事例でも、大手ハウスメーカーの築後15年の住宅のクロスを全部剥がして桐板張りにし、床は杉板にかえ、壁も珪藻土塗り(消臭作用:珪藻土にもピンからキリまで有り、接着剤の入らないものが良い)に変え、臭いも消え、冬は暖かで梅雨時期の湿気もなくなったと大変喜ばれています。消費者の方ももっともっと勉強をして頂きたいと思います。間取り、デザイン、機能も重要ですが、実は素材にもっとこだわりを持って欲しいと思います。住まいは私たちにとって最も身近な環境です。住まいは家族が憩う場であり、休む場です。「休む」という字は人が木に寄り添っている形です。木で作られた空間が休める場なのです。

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