■出西生姜の起源、出西生姜とは 出西生姜は、島根県簸川郡斐川町出西地区の限られたしょうが畑で栽培された生姜です。繊維の少ない生姜で、風味、香りが大変よく、出西生姜独特のピリっとした辛味が特徴です。
出西生姜の起源は、出西村が海に面していた遠い遠い昔のこと、九州方面から一個の御神体 が漂着したのでこれを八幡宮として際祀したが、まもなくその社の辺りに生姜が繁茂し始めた
のでそれを種として栽培したのに始まるという。されば以前は『生姜際』といって毎年四月の上旬 の植えつけ前に、栽培予定地の土と種生姜とを八幡宮の境内に持ち寄って盛んな祈年祭を行ったが、この行事は何時しか廃止されてしまった。
出西生姜の採取時期は十一月だが香気のもっとも高い時期は八、九月頃である。出西生姜は単に 風味が優れているばかりではなく、『娘やるなら出西郷へ、生姜の匂いで風邪ひかぬ』と唄にさへ
唄われている通り風邪薬としても特効があるので、昔は近国の諸大名に献上物として非常に賞賛 され、又何ヶ月掛かりで各所に行商もしたが、現在は組合でとりまとめて山麓あるいわ床下に設けた穴蔵に貯えるほか、砂糖生姜、生姜漬、生姜味噌、櫻生姜などは勿論一般の料理にも使用するので、年産額は四百貫にも上回るけれどもむしろ品不足の状態であり、殊に近年は度々の水害と栄養の隆盛にともなって著しく減産の傾向にさえもある。如何なる生姜でも出西村へ移植すればかならず繊維も小さくなり、切り口が白化するなど出西生姜の特性を持つようになるのも不思議である。
参考文献 島根民藝録/出雲新風土記 行事の巻・味覚の巻 |